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2006-01-17ウェブ上での議論専用のツールを考えてみる(下)

ひと月もかかっちゃった。なにかに役立つといいなあ。議論ツール話これにて完結でございます。これまでの経緯は以下からどうぞ。

ウェブ上での議論専用のツールを考えてみる(上)
ブログで行う議論はけっこう不便だという話。
ウェブ上での議論専用のツールを考えてみる(中)
今回の議論ツールの基本コンセプト。

かいつまんで言いますと「ウェブ上で建設的な議論をすることはとても難しい」ので「議論ツール」が欲しいなと、あったらいいなという話になっています。今回の(下)は具体的な仕様の提案です。

ここは「別冊はてな話」なので“はてなサービスだとしたら”というかんじに仕上げてはてなアイデアに関連づけましたが、宜しければどなたか是非実現してください。はてなのツールでこの複雑さはあり得ない気がするんですよね……


では演説(演説を飛ばす)。ふだん、議論のやり方を身につける機会は多くありません。多くの人が議論と討論の違いも意識しないまま、それっぽい言い争いを議論だと思っているでしょう。ある議論が上手くいかない原因はいろいろあると思いますが、参加者がやり方を知らないのはあまりにも大きい。

少人数ではうまく議論できているようでも、多人数だとこじれてしまうことがあります。もともと価値観が近い少人数での場合ほど、議論の技術はいりません。“分かってる人同士でうまく議論できている”ような状態は、実はそれほど価値の高い議論をしていないのかもしれません。“分かってない人”が入って来たときほど、議論の技術が問われるのです。

まったく価値観の違う人や議論技術の無い人が参入しても生産的な議論を続けるためには、他のメンバーが一定の議論技術を身につけている必要があります。サイト掲示板などでは、せいぜい全員で異端者を無視をするといった結果になりがちです。メンバーがつられて生産性のない話になだれこんでしまうケースも多いでしょう。

またブログでは、“価値観の近い人同士が”“1対1で”話し合っているにも関わらず、なかなか話がかみ合わないことがあります。波及効果の高いブログ論壇にも長所はいろいろありますが、論理的な議論をするためのツールとしては不便な面が多々あります。

ここで提案するのはオープンな場でも建設的な議論をできるツールです。議論の生産性はけっきょくメンバー全員の議論技術にかかっていて、その「一定の議論技術」を学びやすく、実践しやすくすればよいというコンセプトです。メンバー全員が「一定の議論技術」を身につけていたら、議論の生産性は劇的に伸びるかもしれません。

議論ツールの使い方

どういうツールが欲しいのか、使い方を説明する形で述べていきます。すでにあるかのように語ります。まず議論をしている様子は下のようになります。いろんな機能がついたツリー掲示板です。

左側の枠が「議題エントリー」で、そこから右側に質問と回答の「意見エントリー」からなる「意見ツリー」が伸びています。最新の意見は、その意見があるツリーごと上のほうに表示されます。

対話「今後のはてなアイデアは、どのようになると良いか。」の議論ツリー(54エントリー) ■次のページ > 1 2 3 4 5 ■すべてを表示 ■新着エントリー ■整理ツリー D(2)・B(8)・C(4)・A(16)
画面左には議題エントリーがある。「対話 2006 1/1 00:00まで 今後のはてなアイデアは、どのようになると良いか。参加条件:はてなユーザー、公開設定:オープン、定義:今後とは(登録者設定)期日・期間は指定しないが、この議論をふまえてはてなアイデアがリニューアルされた後のこと。 定義:良いとは(6/7 85%)第一義に、株式会社はてなとはてなユーザー双方にとって良いこと。次に社会全般において有益であること。Y  N →定義を発案(24時間以内に賛成80%以上で有効となる設定)公理:1(12/13 92%…確定)今後も株式会社はてなと、はてなサイトの各サービスは存続する。提案中:5(2/3 66%)現行のはてな利用規約の規則を是とする。Y  N →公理を発案(48時間以内に賛成90%以上で有効となる設定)→ルールを発案(48時間以内に賛成67%以上で有効となる設定)」。 それに対し、画面右側にはツリー型の掲示板のように意見ツリーが表示されている。「質問 それは、誰にも分からないのではないか。 よい質問(0)指摘あり 2005 12/22 00:02 -ボタン xボタン Newマーク」という意見エントリー。さらに下に多くの意見が続く。



関連ページ報告欄がある。「対話「今後のはてなアイデアは、どのようになると良いか。」の関連ページ(16) jkondoの日記 - アイデアミーティングの形式変更について 参考になった(5)」とリンクリストが紹介されている

ここに見えているのはエントリータイトルだけで、意見の本文は質問や回答をクリックして読みます。

はてな」的には、これははてなグループはてなリングにくっつく機能として考えています。しかし議論ごとに公開レベルを変えられて、もっともオープンにすると「人力検索はてな」で、アンケートはてなのように公開できるようにします。議論好きのユーザーが集まれるように「議論はてなサイトがあればさらに良し、です。

議論の登録

まず「新規議論」を登録します。

新規議論の登録

対話結論を出さなくてよいタイプの議論です。議題について色々な立場意見を聞いたり自由に発案をして認識を深めていきます。

議決:対話と同じように議論を進め、最後に採決をして結論を決めます。なにかの意思決定が必要な時に行います。

討論参加者が複数の立場に分かれて、どちらの論が優れているか勝ち負けを競います。審判として中立な第三者が必要です。

報告:議論ではありませんが、あるテーマに関する報告ページだけを作ることが出来ます。

多数決:議論ではありませんが、あるテーマに関する多数決だけを採ることが出来ます。

議論のコピー:同じグループ過去の議論をコピーします。それまでの意見は残しつつ議題を修正したい場合などに行います。

議決・討論・多数決では採決にアンケートはてなを利用できます。アンケートはてなを利用する場合は有料です。

(こういう議論の種類を分けられる議論ツールってなかなかないものですね。ウェブ掲示板とかで存在したら教えてください。)

そのあと議論の設定に進みます。「対話」の設定はこんなかんじ。特徴としては公開・参加レベルを特定ユーザーから閲覧者全員まで広げられたり、更新通知メールの設定を細かくできます。設定しますと議論ページと議題エントリーが作成されます。

「議決」の設定では採決に関する項目がいろいろ増えます。「討論」の設定では立論の数や進行に関する項目が増えます。

議題に回答・質問する

いよいよ議論です。議論ツールは議論の「入力」「学習」「把握」を支援するのですが、まず入力支援です。議論のルール議論のしかた「議論のルールまとめ」に準拠しまして

  • 議論には「討論」「議決」「対話」の3つがある。「討論」という形式は普通は適用しない。
  • 議論は「問題提起」から始まって、「質問」と「回答」の繰り返しで進行する。
  • 「質問」には、どこまでがわかってどこからがわからないのかを書く。
  • 「回答」には必ず理由を書く。
  • 他人の回答には質問をする。
  • 「質問」「回答」ともに何を言ってもいい。逆に、他人の質問や回答を制限する事はしてはいけない。
  • 「質問」「回答」ともに皆のものであり、発言者とは関係がない。誰がどの質問に答えても、答えなくてもいい。
  • わかる質問にはできるだけ回答せよ。回答はボランティアだが、議論はそれで成り立っている。
  • 自分の考えに固執せず、他人の意見を聞いて良いと思ったら素直に受け入れなくてはならない。
  • 自分の考えに正直であれ。自分が正しいと思ったら正しいと言い、間違っていると思ったら間違っていると言え。
  • 議論は相手の意見を聞くことが目的である。意見を言うことが目的ではない。

複雑なものではないのですが、その実践のいかに難しいことか。

議題エントリーに質問をつける

「議題エントリー」に「回答」か「質問」をするところから始まります。(中)で述べましたが、このツールは面子がそろってなくても、自分一人でどんどん論を進められます。その点で「会議ツール」とはまったく趣旨の違うツールです。基本的にどの意見がだれのものか表示されません。

質問がついていないエントリーは、枠線が実線です(HTMLではem要素になってる)。質問を受けると、枠が破線になって色が薄くなってしまいます。意見が「無効」になったことを示します。ついた質問に答える(回答エントリーをつける)と、質問のほうが無効になって元のエントリーは有効に戻ります。無効エントリーは単に「未回答」である場合も多いですし「無意味」ということではまったくないのですが、「有効エントリー」のほうは誰からも疑問視されていない意見ですから、それなりに重視する必要があります。

「質問エントリー」には回答か質問ができます。「回答エントリー」には質問ができますが「回答」はできません。なので対話の「議題エントリー」は質問エントリーの一種ということになります。

議題エントリーも無効になることがあるでしょう。“適切な議題”が設定されないために永久に議論が終わらないということがあります(参考:議論のしかた - メタ議論)。議題に重大な質問がついたら、登録者の判断や参加者の採決で議題変更や議論の登録しなおしをしたほうが良いでしょう。その際、議題とURLだけが違ういままでの議論のコピーを登録できればいいなと思います。

意見エントリーの入力

エントリークリックすると中身は質問エントリーページ例のようになっています。

「ひとつのエントリー」には「ひとつの質問」だけを書いて、問題を分割することが原則です。そうすれば他の人でも質問に答えやすくなりますし、議題を細分化して分類や再構成がしやすくなります。

質問タイトル

は、
か。

※質問は「〜〜は、〜〜か。」の定型にそってそれぞれ50文字以内ずつでお書きください。

質問エントリーの入力画面では、タイトルは強制的に「○○は、××か。」という定型に合わせます。ここを確実に「主語が明確な質問文」にしないといけないからですが、ただそう言うだけですと日本語話者は主語を抜いて語尾を濁してしまうでしょう。それはとても強い欲求です。ちょっと面倒ですが議論を推進させる車軸の要なので質問文は「○○は、××か。」で固定します。

質問エントリーページの例はこちらタイトル参加者全員が変更できます。意見エントリーは基本的に全員の共有物という考えです。ただし、意見登録者が他の人の編集を改めて修正した場合は、それが意見の正しい概略だとして固定します。

回答エントリーページの例はこちら。回答エントリーではシステム化はしませんが回答の「理由」を書くのが必須で、理由を箇条書きする項があります。これも第三者が理由を追加して、回答を補強することができます。

意見の書き直しについては、基本的にできないほうが良いのではないかと考えています。

意見の評価

回答エントリーには「なっとく」、質問エントリーには「よい質問」ボタンで評価を与えられます。これは論理性の無い評価でOKです。議論ツリー画面にその票数が表示されます。他になんの影響も及ぼしませんし議論的には無視して良い数字なのですが、先ほどの「有効・無効」が意見の「正しさ」なら、こちらは意見の「人気」。このツールではただ「賛成!」というような発言は非推奨なので、その意見好きだ、と言いたい気持ちを発散するためにも必要な機能でしょう。

さらに意見の記述に問題があると思ったら、「指摘」をすることができます。ただし用意された項目内から指摘の種類を選ばないといけません。これについては「良くない意見」の対処方法で詳しく述べました。意見した人にとって議論技術学習の機会となり、また「詭弁か否か」といった問題に議論がそれてしまわないよう、そちらにツリーが使われることが無いようにするという狙いです。ひとつの指摘につき「指摘者2回・意見者2回・第三者ふたりまで1回ずつ」とコメント回数を制限するなどして長期化を避けます。

意見ツリーの図

「正しい」「人気がある」の他に、「頑張っている意見」という評価も考えられます。強い意見と言えるかもしれません。それはその意見に質問がついていて、さらにその質問に有効な回答が寄せられているとき。いくつ有効な回答を得た質問をぶら下げているかによって、その意見が注目を浴びていてよく考えられている、と判断します。一番上の見本で下の方で「回答」の下のバーに3本色がついているのが「頑張っている意見」です。有効回答のついた質問2個でバー2本、質問4個でバー3本、質問8個でバー4本、のように増えていきます。

意見の整理

「対話」では結論を出す必要がありませんが、上のような評価で「正しい」「人気のある」「強い」意見を見つけやすくなります。オープンで手のつけられないような議論ほど、議論ツールによる整理と把握が重宝するでしょう。

+ボタンxボタンの図

まず読む価値が無いと思った意見エントリーの非表示機能です。意見ツリー上でエントリーの「-」ボタンを押すと、エントリーがたたまれて議論的にも「無効」意見になります。「x」ボタンを押すと、「その意見を登録したユーザーの全ての意見」を非表示&無効に出来ます。

さらに、議論全体の「整理ツリー」が作成できる画面があります。あるったらあるのです。その議論の全ての意見ツリーを簡易表示して、ブラウザブックマーク編集のように、階層や順序を入れ換えられるのです。整理用のフォルダを作るように、その画面では整理用のエントリーを作成できます。

議論は細分化すると2ちゃんねるでおなじみのツリー分類のようになってくるはずです。そこまでいかなくとも、それなりに整理できたらその画面を保存して公開しましょう。議論ツリーの上下にリンクが張られます。後から議論に参加する人にとても便利なはずです。

「整理ツリー」は個人用と、Wiki的に共有で編集できるものを作れます。一番上の図で赤文字で「D(2)」のようになっているのは、「名前記号Dの個人用(赤文字)の整理ツリーで、整理後にできた未整理のエントリーが2個ある」という意味です。整理ツリーは「参考になった」ボタン投票と未整理の少なさで評価され、表示順が決まります。

このように整理機能が充実してくると議論する気のない人の影響を排除しやすいので、オープンなのに邪魔が入りにくいというのが最大の利点になってくるかもしれません。

結び

あと一番上の図に報告欄の機能がありますが、説明は割愛します。だいたい以上のように議論を把握して発言して、学習していきます。

まあ、おなじみで限定的なメンバーでの議論はフル機能を使って原理原則通りやる必要がないかもしれませんが、邪魔な部分はほとんどないでしょう。自分一人で考えをまとめるのにも使えるはずです。

議決」はこれに採決機能がつくだけで、特に考えた工夫はありません。みんなで編集できる「結論エントリー」が作れるといいかな、ぐらいです。「討論」はけっこう違うので、「討論」のやり方で少し進め方が説明してあります。

あとこのツールではヘルプ書類の充実がたいへん重要だということを強調します。基本的に建設的な議論をすることは、このツールが無くても、議論に関するルールアドバイスの集合を体得しているメンバーでなら普通の掲示板で可能です。徹底できれば書類による学習でも良いのです。逆に学習用のヘルプが不十分であると、このツールは単に「言い争いがやりにくい掲示板」になってしまいます。

最後に今回の議論ツールの仕様案で“議論とはどう行われるべきか”、といった原理原則は全面的にno titleを参考にさせて頂きました。演説もかなり受け売りです。私の考えも混ぜてしまったので良くない部分があるかもしれませんが、とにかく勉強になりました。ありがとうございます。

ではここまでお読み頂いた方には感謝感謝です。いつか議論ツールでお会いしましょう……あてはないけど……idea:922トラバ送っとこう……ではそんなこんなで……。


(議論ツール話目次へ)

yoo1999yoo19992006/02/11 04:23すごく実現してほしいツールです。すぐにでも購入したいなぁ。5000円くらいで売ってほしいです。

sugiosugio2006/02/11 04:33わー、そんな価値をみとめて頂いて恐縮です。

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