別冊はてな話 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2005-12-05はてなアイデアと予測市場の相性は良くないんじゃないかの話

先日の11月29日のはてなアイデアミーティング(はてなアイデアの継続について)はてなアイデア自体は継続、さら予測市場を使うシステムもそのままで、予測市場が機能するように修正を行うとの方針が語られました。正確な詳細はそちらの音声ファイルを参照されたしですが、

  • 売り注文と買い注文を同時にできるようにする
  • 価格が有名無実化・理論上有り得ない数字になってしまうのを是正
  • 今は基本的にアイデアを良いと思う人だけが買うので、売買の中でマイナス意思表示できるようにする

このような修正がなされるとのことで。あと市場システムと言うわけではないですが、ずっと検討中要望中のものに関して新陳代謝が行われるようにするとか。

近藤さんスタッフが長い時間をかけて温めていることですから、ちょっと考えつかないような深い洞察あっての新プランなのでしょう。ただ私ははてなアイデアが好きですし、予測市場と言うシステムも面白そうだと思いますが、「はてなアイデア予測市場が合うか」ということに懐疑的であります。こんなことはとっくに検討済みかもしれませんが、スタッフが「合宿1泊とその後2週間」の作業とやらに入る前に、ひとつ懸念しているところを聞いてもらえたらいいなあと、書いてみる次第であります。>g:hatena:id:hatenaidea

集団知を扱うシステムとして(2) 各メンバーの独立性 (3) 分散化*が不十分なのではという感想もあるのですが、ここでは、予測市場としてちゃんと機能したとしても結局その実装はあまり役に立たないのではないかと思う理由を書きます。

アイデア評価は異様に難しい

はてなアイデア予測市場制が難しいと考えられる理由のひとつは、アイデアを評価する予測の複雑さ、難しさです。スタッフは0.01〜100.00の間で値段をつけられるのでしょうか。

多くのユーザーは「AとBふたつのアイデアのうち、はてなはどちらを優先すべきか」といった具体的な問題なら、最大多数の最大幸福になる正解を選べると思います(検証できませんが仮想の『正解』があるものとして)。

しかし「AとBアイデアそれぞれの値段はいくらが妥当か」という問題は、はるかに難しくなります。AがBより高いと考えても、1.20と1.01が妥当でしょうか? それとも4.50と0.23が順当でしょうか?

ひとつのアイデアの値段を考えるにしても、

といった多くの要素が気になってきます。「ヘルプの誤字修正」だったらほとんどのファクターを考えずにすみますが、「バグ修正要望」は放置の可能性が出てきますし、「不具合」はさらに難しくなります。「新機能」に至っては不確定要素の渦の中で評価してみるしかありません。

例えば私はアイデアA・B・Cをそれぞれ0.23・0.45・0.01と評価します。誰かはアイデA・C・Kを4.5・1.0・1.6と評価します……このようにして出していく評価の集積が、本当に有意義なデータになりうるのでしょうか?

相場が分らないまま銘柄が消える

そんな五里霧中の市場でも実社会なら、株価は「会社の利益が」「石油の価格が」といった市場外の材料によって推移し、銘柄同士の比較によって磨かれ、順当な相場が形成されていくのでしょう。

でもはてなアイデアは、株価が順当な数値かどうかは分らないまま銘柄が消えるシステムです。はてなが強制的に株を買い上げてしまうような形ですが、その買収が成功だったかどうかを計ることができません。そしてユーザーは実装か却下か、配当(はてなの買い値)はいくらだったかといった事実だけを反省材料にして株の売買が続けられていきます。これは、なにを予測しているシステムなのでしょう?

優良株が長期に渡って存在できないので、株価の相場が成り立っていかないことも考えられます。

配当バランスの難しさ

現在最も確実な投資は、各サービスヘルプのミスを見つけて指摘することのようです。ミーティングなしで実装が期待できます。

これに比べて、まったく新しい機能の要望は先ほど述べたように大変評価が難しくなります。高評価のアイデアが誤字指摘のような「少ない工数」のアイデアばかりに偏らないようにするには、不具合等と新機能を分けてチョイスするか、多工数アイデアと少工数アイデアでうまく配当バランスを調整していく必要があるでしょう。はてなによる恣意的な調整が必要になり続けるかもしれません。

アイデア保守化

株価が上がればそのアイデアへの投資額が多くなり、必然、そのアイデア却下された場合の損失が大きくなります(却下リスクの増大)。却下リスクが増大すると、それを回避しようとアイデア保守的になるはずです。

保守化」は実現性の高いアイデアが高評価になることなので、それ自体は必要ですが、需要の乏しい凡庸なアイデアが通ってしまう要因にもなり得ます。

たとえば“はてなホゲホゲで実装された●●機能を、はてなフガフガでも使いたい”といった既存の機能とサービスの組み合わせを言うアイデア保守的と言えます。はてなアイデアは要望の人気・一般性を計っていないので、その「いかにもありそうな」機能が本当に必要か、需要があるかどうか、スタッフが見抜くのは難しいでしょう。

もし本当はたいして需要がなければ、単に実装しない理由が見つからなかったアイデアが優先されてしまったということです。予測市場という仕組みなら、このバイアスが常にかかるはずです。市場抜きのはてなアイデアアイデア出しと賛成投票の装置なら、はてなアイデア予測市場の部分は「議論抜きで常識発生装置」なのでは。(たしか)当たり前な反対意見アイデアがつぶされることを嫌う近藤さんの作るツールとしては、ちょっと奇妙な設計にも思えるのです。

たまにははてなアイデアのような、配当を期待しないまま支持されたネタアイデアが高値になることもあるでしょう。一見、保守アイデアでないものも評価されるように見えても、保守アイデアとヤケ気味の投資がなされたアイデアへの二極化、という偏りもあり得ると思います。

8/28 集合知の無駄づかいのときと似た結論ですが、保守化の匙加減・ガス抜きが必要になるでしょう。

懐疑的です

以上のような懸念から、手間がかかりそうなその予測市場での活動で、どれほど有益なデータが得られるのか、懐疑的に見ています。

あと先日書いたようなアイデアポイントの影響力の制限が盛り込まれないと、メインアカウントを複数取得した人が簡単に強くなってしまう問題もけっこう気にしています。

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